ルディの怪談話。「ピースサインをする女の子」

暗闇に灯るロウソク

あれは中学2年の夏。

ちょうど夏休み前の暑い夕暮れ時のことでした。

「ミーン、ミンミンミーンッ」

セミの鳴き声が響く通学路。

夏休み前最後の部活を終えた僕は、

隣のマンションに住む友達と二人、
学校での出来事や他愛もない話をしながら家に向かっていました。

僕らの学校では、
長期の休みに入る前に

道具箱や習字道具、学校のロッカーにある荷物を
家に持ち帰ることになっています。

その為、
友達の両手はその荷物で塞がっていました。

事前に荷物を持ち帰っていた僕は、

少しでも負担を減らしてあげようと
友達のシューズバックを持ってあげることに。

学校から家までは歩いて15分。

大した距離ではないので
話している間に、あっという間に家についてしまいました。

「じゃ、また明日な!」

僕の家の前でサヨナラし、
友達はそのまま隣のマンションへ。

「やっと夏休みかぁ。」

家に着くと、
少しずつ実感が湧き、嬉しさがこみ上げてきます。

ここで、

僕はあることに気が付きました。

「あっ、いっけね。

シューズバックそのまま持ってきちゃった。

返しに行かなきゃ。」

さきほど持っていた友達のシューズバックが
まだ僕の手にありました。

今さっきサヨナラしたばっかりだから、
すぐに持っていけば大丈夫だろ。

自分の荷物を下ろし、
着替えもせずに

すぐさま家を飛び出し、
友達の家に向かいます。

その友達の家は20階建ての建物の最上階。

エレベーターは2つあり、

窓付きの7~8人しか乗れない小さなものと
窓はないけど15~6人乗れる大きなもの。

高層マンションの割にはスピードの遅いエレベーターです。

僕は
小さな窓付きのエレベーターに乗り、
20階に向かいます。

スーッと
ゆっくりとしたスピードで上がっていくエレベーター。

チンッ。

1分ほどで友達の家がある20階に。

マンションのエレベーターホールは
降りて右向かいに大きなエレベーターがあり、

降りて右側には大きな格子状の窓があります。

エレベーターホールの間取り図

その格子状の窓からは
オレンジ色の夕日が差し込んでいるのが見えました。

マンションの真ん中は吹き抜けになっていて、
その吹き抜けを囲んで廊下があります。

そして、
友達の家はエレベーターホールから吹き抜けを挟んだ
ちょうど向かい側。

ぐるっと廊下を歩いた先にあります。

スタスタと廊下を歩き、
家の前に。

「ピンポーン!」

玄関の右側にあるインターホンを鳴らします。

鳴らしてみても一向に出てきません。

そもそも静かすぎて誰もいる気配がない。

2~3回鳴らしてみても
全く出てくる気配はないのです。

つい先ほど別れたばかりなのにおかしいなぁ。

そんなことを思いつつも、

「シューズバックは別に盗まれるものでもないし、

ドアノブに引っ掛けて帰ろう。」

持っていたシューズバックの紐を
ドアノブに引っ掛けて、

また廊下を引き返しました。

エレベーターホールに戻ると、
大きなエレベーターが10階くらいにあり
ボタンを押せばすぐに来そうな感じ。

すぐにボタンを押し、

行きに乗ってきたエレベーターを背にし、
大きなエレベーターの前で来るのを待ちます。

スーッとエレベーターが上に上がり始めたその時・・・。

ゾクッ。。

背中に寒気を感じました。

何の気なしに後ろを振り返ってみると、
白い壁に夕日と影が映っていました。

あれ?

ちょっと待てよ・・・。

どう見ても影の形がおかしい。

このエレベーターホールの窓は、
格子状になっています。

エレベーターホールの窓の形状

夕日があると通常ではこんな感じになります。

夕日が差し込む窓

夕日が差し込むと格子状の影

窓が格子状ならそこにできる影も格子状になるはず。

普通なら壁に窓の形をした四角の影ができるはず。

しかし、
そこにあったものはそれとはまったく別の形をしていました。

そう、
それは明らかに人の形をしていたのです。

ただの人影ではなく
おかっぱ頭の女の子が、ピースサインをしているのです。
(不思議なことに、なぜか女の子だと直感的にわかりました。)

ピースサインをする女の子

壁を触ってみたり、
窓の外を覗いてみたりしても全くおかしなところはありません。

(この時はそれほど恐怖を感じることはなく、あたりをひたすら調べてみました。)

なに一つ理解できぬまま、
エレベーターは20階に上がってきてしまいました。

恐る恐る後ずさりしながらエレベーターに乗り込む。

エレベーターの扉が閉まるまで、
その影はこちらを見つめながらピースサインを続けていました。

あれは一体なんだったんだろう。

ここで急に恐怖がこみ上げてきて、
一目散に家に逃げ帰りました。

それからは
何事もなかったかのようにいつもの日常が始まりました。

あの影は僕になにを伝えたかったのでしょうか。

あれ以来、
あの影を見ることはありません。

これが生まれて初めて体験した
心霊体験です。

信じるか信じないかはあなた次第です。。


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